昨今のハウスシーンにおけるダブ・ハウス系のムーブメントと共に再評価されたレーベル〈Balihu〉のオーナーでありディスコ・ダブサウンドのオリジネーターであるDaniel Wang。
80年代後期のニューヨーク在住時に耳にしたファンキーなハウスミュージックに衝撃を受け、自らのレーベル〈Balihu〉を設立。レアなディスコ・サンプルが盛り込まれている不朽の作品「Like some dream (I can’t stop dreaming)」を筆頭に数々の名曲を発表した。ソーホーの楽器店で働くようになってからはムーグやテルミン、ヤマハのシンセサイザーなどを駆使し、100%オリジナルのトラックを制作。90年代後期にはMetro AreaのMorgan Geistが主宰するレーベル〈Environ〉から作品をリリースしたほか、〈Ghostly〉〈Playhouse〉など数々のレーベルからも作品を発表している。
ダンスミュージックの中心地がニューヨークからヨーロッパへと移りゆく中、2003年に拠点をベルリンに移動。ハウス/イタロ/クラシックなどを織り交ぜるユニークなDJスタイルで世界中のフロアを賑わせ、ここ日本でも野外フェスTaicoclubなどのビッグパーティからアンダーグラウンドなクラブまで、場所を選ぶことなくダンスフロアを笑顔で埋め尽くしている。
2009年には〈Balihu〉の軌跡を包括したベストアルバム「THE BEST OF BALIHU 1993-2008」をリリース。シーンの動向に左右されない恍惚の世界観が凝縮された七色のディスコ・アルバムとして好事家を狂喜させた。そして2015年、1年以上にも及ぶ制作期間を経て、世界最高峰のディスコ・レーベルであるサルソウルのオフィシャル・ミックスCDをリリース。フィリー・ディスコからミュンヘン・サウンド、エレクトロまで、サルソウルが誇る膨大なカタログと物語を1枚にまとめあげた至高の内容となっている。
彼のスタイルは決して奇抜なものや派手なものではなく、むしろどこか懐かしくノスタルジックな感覚を持ち、しかしながら懐古趣味のガラージ回帰とも違うソウルミュージックのような温かみと愛情が溢れている。20年近いキャリアの中、多いとは言えないリリース数にも関わらず、絶えず現場から支持を受け続けているのは、常に音楽に対して真摯に向き合う彼のアティチュードがカタルシスを与えてくれるからだろう。